コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
「たしかに、子育ては想像以上に大変らしいしな。それに蓮は歌手とはいえ、まだ俺たちと同じ大学生だろ」

翔さんも言った。

「と言っても、三月になれば卒業するんだけどね〜」

空さんと椿さんが笑う。

カラン、コロン…。

入り口につけてあるベルが鳴り、私は皿洗いの手を止め、「いらっしゃいませ」と営業スマイルを浮かべる。

「こんにちは〜」

「こんにちは。ほら、二人とも挨拶して!」

お母さんに促され、二人の小さい子どもたちも挨拶をする。双子の男女だ。

「こんにちは!」

「やっと来た!ほらこっちだよ!」

椿が立ち上がり、四人に手招きする。

お父さんは加藤蓮さん。自分で作詞作曲をする人気歌手。

お母さんは加藤美桜さん。耳の不自由な人がいる花屋さんで、通訳と店員として働いている。そして蓮さんの奥さんだ。

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

双子の女の子がテーブルに駆け寄る。男の子はお母さんにくっついたまま、恥ずかしそうにしている。
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