おやすみピーターパン
翌朝。
京子さんはいつの間にか戻って来ていて、しかし病院の白衣のままでいそいそとどこか慌ただしく朝食に目玉焼きを作っていた。
「京子さん、またすぐ病院に戻る?」
明らかに朝食を作るためだけに戻ってきた、という姿だったから尋ねた。
加えて横にいたパパも、急患?と訊く。
「うん。ええ、そうなの。すぐ戻らないと」
「だったら朝ご飯くらい、私が作るよ?」
「ありがとう、でももう終わるから。それより風羽ちゃん」
かたん、とお皿テーブルに並べて、視線だけを私に向けた京子さん。
「今日はネバーランドに行っても空くん居ないわよ」
「え?」
出来たばかりの目玉焼きをお皿に盛り付けながら、京子さんはそう呟いた。
「夜中に熱出しちゃってね、昨日の夜からネバーランドじゃなくてクリニックの病室に寝てるの」
私は目を見開いた。
それって、いわゆる入院ではないのか、と。
「そんなに酷いの?!」
「ううん、風邪よ。でも酷くして胸に響いたら大変だし、ネバーランドには小さい子もいるから」
………風邪…。
確実に昨日雨に降られたことが原因だろう。他に考えられない。やっぱり、せめて上着を貸せばよかっただろうか。
私は居ても立ってもいられなくて、京子さんがクリニックに戻るのに便乗して、クリニックへ向かった。