おやすみピーターパン
「たいしたことないなんて嘘だよ。だんだん悪くなってるんだ。てゆうか、死ぬ」
苦笑いのついでみたいにさらりと落っこちた言葉。
地面に落ちる寸前でなんとか拾い上げたその言葉は、あんまり冷たくて固くて、上手く呑み込めない。
今度は私が目を見開いていた。
「………あ、……」
私は何を言おうとしたのだろう。全く形にならなかった言葉が、情けないだけの息に変わって唇の端から零れた。
「今すぐじゃないよ。けど大人にはなれない。身体が成長すると悪くなる。生まれた時からそう決まってた」
ねえ、だから。と笑う。
「ピーター・パンみたいだろ?」
なんにも面白くなんてないのに。
『大人になる自分のことを考えたくなくて、子供の、このままで生きていたくて、ネバーランドに逃げてきた』
ああ今やっと、昨日のあの声が届いた。君の言いたかったことが分かった。分かったのに。どうして、何にもすっきりしない。心の中の霧が濃くなっていくだけだ。