おやすみピーターパン
「風羽!久しぶりだなぁ」
フェリーを降りてそこからまた少し車に乗ると、目的の場所に到着した。
「二郎おじさん!」
パパの兄にあたる二郎おじさんは、熊のような体型をした優しいおじさんだ。私が到着するのを、家の門の前で待っていてくれた。
バランスボールのようなお腹に飛び込むと、二郎おじさんは嬉しそうに頭を撫でてくれた。
「風羽ちゃん、初めまして。京子って言います」
そう言って丁寧に挨拶をしてくれたのは、おそらく二郎おじさんの奥さんだろう。
二郎おじさんはたまに1人で東京に遊びに来てくれたから知っていたけれど、私が二郎おじさんの家に来るのは初めてだ。だから、二郎おじさんの奥さんとは初めましてだ。
京子さんはすごく綺麗で、若くて。二郎おじさんのどこが好きなんだと思わず聞きたくなったほどだ。
「よく来たなあ、風羽。まぁそのなんだ、東京では色々大変だったんだろうけど、まぁこっちは時間の流れもゆっくりだし、人もみんなおおらかで住み良いぞ」
「ちょっと不便そうだけどね」
「はは、それは否定出来ないなぁ。なぁに、その分豊かな緑があるさ」
そうだ、と二郎おじさんは思いついたように言った。
「引っ越しは俺達大人3人でやっとくから、風羽はちょっくらこのあたりを探検してきたらどうだ?」
「探検?」
「こんな大自然の中。東京じゃあそうそう歩けないぞ。後日改めて案内してやるつもりだが、その前に少しこのあたりを知って置くのも悪くないだろう」
二郎おじさんはもっともらしい理由を並べて、私を探検を行かせようとする。
引越しの準備をするのは面倒だし、パパは二郎おじさんに仕事を紹介してもらうようなことを言っていたから、大人どうしで話したいこともあるのだろう。
「うん、わかった。行ってくるよ」
それなら体良く追いやられてやろう。
大人は嫌いだが、この3人は好きだ。