おやすみピーターパン
二郎おじさんに連れられて来たのは、ログハウスのようなテイストのデザインで造られた、横に長い建物。
門の脇に、カタカナで「ネバーランド」と書かれている。
「え、なにここ」
思わず抑揚の無い声が出る。
大きくてオシャレな建物ではあるが、外観はなんだか老人ホームのような形。老人ホームとしてなら優秀であるが、「ネバーランド」を名乗るからにはもっとこう………ゆめかわいい、みたいなのを期待していたわけで………。
「何を想像してたのかは知らんけど、ネバーランドってのはこの施設の名前だぜ?」
「…………施設……え、まさか老人ホーム」
「ばかやろう。児童養護施設だ」
じどうようごしせつ…………。
学校の授業で聞いたことはある。身寄りのない子供たちを預かる施設だっけ。
「ここには15人もの子供たちが暮らしてんだ。京子と俺が交代で泊まってる。皆、親を亡くしていたり、訳あって親と暮らせなかったりと、様々事情を抱えてる」
「…………みんなこの島の子供なの?」
「いや。ここの子供たちはみんなそれぞれ、病気や障害を抱えてるんだ。だから普通の児童養護施設で暮らすのはちょっと大変なんだ、精神的にも身体的にも。だから俺は全国からそうゆう子供を集めて、ここで皆で暮らしてる」
「病気や障害…………」
テレビのドキュメンタリー番組でも見てるような気分になった。学校でしつこく講習を受けさせられるから、病気や障害を持つ子供がいることはもちろん知ってる。親がいない子供がいるってことも。可哀想だとは思う。だけど、自分と関わり合うことはないと思っていた。
そこで、ふと思いついた。
「……じゃあ、ピーターパンくんもそうなの…?」
何が、とは二郎おじさんはもちろん聞かなかった。
ただふっと笑って、木でできた重そうな扉を開いてくれる。
「おいで、会わせてやるよ」