Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
春熙に殴られた男は、鼻が折れた上にあごの骨まで粉砕されていた。

しかしこの件で、春熙は過剰防衛で訴えられることはなかった。
おじさまが相手に、十分すぎるほどの和解金を積んだから。
しかも叩けばいくらでも埃が出るような人たちだったら、釘を刺すのも余念がない。

それに後から知ったけど、私の携帯にはGPSが付けてある。
それはいまも変わらない。
私がどこにいるか、父が――春熙がいつも、把握するため。

こうして私のほんの小さな冒険は幕を閉じた。
私に春熙には絶対に逆らってはいけないと誓わせて。



梅雨明け宣言が出たその日、高鷹部長は荒れていた。

「これじゃ、売れるものも売れないと言っているのに、上の人間は……!」

イライラと動物園の熊のように歩き回る高鷹部長に、誰もが戦々恐々としている。

「それでなくても事業が失敗続きだというのに、なにもわかってない……!」
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