Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
いままで誰も、私がいまの状況に不満があるなんて気づかなかったのに。

「その、私は」

言いかけて口が止まる。
彼に言ったところで、なにかが変わるとは思えない。
それにいま、彼とこうやって話しているというだけで、父はカンカンに怒るだろう。

「私は?」

高鷹部長が先を促す。
けれど私は、いつものように諦めてしまった。

「なんでもない、です」

曖昧に笑ってごまかそうとしたが、できなかった。

――高鷹部長が嘘を許さないほど真剣な瞳で、私を見ていたから。

「君はこれからもそうやって諦め続けるのか」

視線は一ミリだって逸らせない。
覚悟を決めるように小さく深呼吸し、重い口を開いた。
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