先輩。
「一緒に海でも行くか、前みたいにさ!」
そう言って微笑んだ先輩の顔がやけに眩しくて、私はすぐに顔を逸らした。
────ドクンッ・・・・・
ほらまた。
私の心臓は、私の意思に逆らって「言っちゃえ、言ってしまえ」と急かし始める。
…やめてよ、本当に本当に言ってしまいそうになるから。
今のこの関係が愛おしく感じるくらい大好きなんだ。
隣にいることが出来なくたって、たまに会って久しぶりと言い合えるこの関係が好きなんだ。
私には…私には、それくらいがちょうどいいんだ…。
「いいですね!みんなで言った海、楽しかったですもんね。今度飛び込みとかしてみましょうか」
彼は嬉しそうに目を細めて笑った。
「行こ行こ。おっ、飛び込みね!去年出来なかったから今年はーって思ってたんだ。さすが付き合いが長いだけあるわ!今度俺ら早く行って、島の海独り占めしちゃおうぜ!……あ、1人じゃないから独り占めじゃないのか?なんて言うんだろう…まいっか」
あぁ…ヤバい、好き。好きだぁ……。
「はは。じゃあ、楽しみにしてます。また連絡しますね」
「おう!んじゃまたな!」
そう告げて、先輩は駆け足で私の前から去って行く。
走るその後ろ姿は、毎日のように見ていた2年前のあの姿とは全然違うはずなのに、どうしても重ねてしまう。
「遠いなぁ…」
呼び止めて言ってしまおうか。
2年前、否、一緒に過ごしてきたほとんどの日々に恋焦がれていた。
ずっと昔に、彼に好きだと言ったことがある。
でも、その時の気持ちよりもこの気持ちはだいぶ大人になってしまった。
ねぇ。あの頃と同じ。今でも好きだよ。ずっと好きだった。
理由なんて聞かないで欲しい。
いつか、思いが繋がる日を願って、
時折振り向いてくれる先輩に手を振った。