朝マヅメの語らい
橋爪は入社してから十年間、情報システムが専門のグループ会社との関係を築くことに奔走してきた。だが、今後の発注を取りやめ、自社開発をするとなれば、当然関係は悪化する。

 同じことを続けていても結果が変わらないのならば、やり方を変える必要があるのは当然だが、十年近く費やしてきたことがなんの礎にもならない改革が、どれほど人のやる気を削ぐのか、上ばかりを眺めている連中には分かりはしない。

 改革というものは、傍目には魅力的に見えるが、それまでの苦労を全てないがしろにするものなのだ。

 橋爪は、ベンチャー気質を謳っているこの企業には、自分はもはや必要のない人間なのだとよく理解していた。

だからこそ、ここに居座って切るに切れない程度の仕事をこなし、迷惑なポジションに居座り続けてやろうというのが、改革派の人間に対してのささやかな報復だった。
< 5 / 50 >

この作品をシェア

pagetop