どうぞ私を裁いてください。


「結月すみれです。去年は六組でした。趣味は…読書、です」

よろしく、とは言えなかった。
誰とも仲良くするつもりなんてないのに、嘘でもよろしくなんて言えなかった。

できるなら、話しかけないでほしい、そんな意味も込めて、言わなかった。


趣味の読書だって、思いつきで適当に言ってみただけで、確かに本を読むことは好きだけど、趣味というほどではない。
たまに暇を潰すために目を通して見るだけだ。


そういえば、柳くんは一組で、わたしは六組なら、お互いがお互いの存在を知らなくても不思議じゃなかったんだな。
どうして気づかなかったんだろうって思ったけど、それだけクラスが離れていれば関わることはほとんどないし、気づかなくても仕方ない。

特に、一組と六組なら、確か教室のある階も違ったはずだ。

用事がない限り教室から出ずに、そっと隅で本で読んでいるようなわたしが、別の階にいた、いるはずのない柳くんの存在を認識できないのは必然だ。


仕方なかった、と言い聞かせて、わたしはまたそっぽを向いた。


もしこれが、別の人だったらどうなっていただろう。
ここまで気負うことはなかっただろうか。
多分、他の人ならわたしに関わろうともしないから、わたしにとってもどうでもいい存在になっていただろう。


だけど、柳くんは。

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