どうぞ私を裁いてください。


自己紹介、諸連絡が終わって、明日の提出物も確認してしまって、もう帰ってどうぞ、と言われて、わたしはすぐに鞄を手にとった。

さっさと教室を出たかった。



「結月さん」

だけどそれは、柳くんがわたしの名前を呼んだことであっさり阻止されてしまった。


「なに」

「家、近いの?」

さよなら、くらいがよかった。
会話なんて早く切り上げたかった。


それに、家族となら話はするけれど、クラスメートや教師のような他人とは、しばらくまともに話をしていない。
それこそ、業務連絡のような単調な会話しかしていない。

だからこんな、当たり障りのない何気ない会話を続けるために、どう返せばいいのか分からなくて、一瞬言葉が詰まった。


「え、っと、電車で、三駅くらい。最寄りからは歩いてすぐだし、遠くはない、かな」

たどたどしく答える。
まるではじめて会った人と話しているかのよう。
いや、はじめて会った人とのほうが、もっとまともに話せるかもしれない。

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