どうぞ私を裁いてください。


柳くんの表情、あんまり見たことないから、小さな変化でもなんだか新鮮だ。
ただひたすら無表情の、冷たい柳くんしか知らないから。


…でも、それでも、こちらに引っ越してきて、この学校に通うことにした柳くんにとって、わたしは唯一と言っていい、数年前からの知り合いなわけだ。

だから、こんなわたしに、話しかけてくれるのか。


一人納得していると、さきほどまで誰かと話していたらしい松山くんが、こちらに気づいて首を傾げた。


「あれ、浩太がめずらしく女子と話してるじゃん」

というか人と、なんてさらりと失礼なことを言ってのける。


松山くんの話からして、柳くんはそうそう人と積極的に関わることはなく、特定の友だちと一緒にいることが多いのだろう。

柳くんは、もとからそういう人だ。


「未來」

柳くんが、名前を呼んだ。
柳くんが下の名前で呼ぶなんて、本当に仲がいいんだと、そう思った。


でも柳くんがほんのちょっとだけ、不機嫌な顔をしているのは、松山くんがなんでもない顔で言い放った失礼なことに対してだろう。

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