どうぞ私を裁いてください。
ほんのちょっと口角を上げて、ふわりと優しい笑みを浮かべる。
それは、わたしが覚えていない、見たことのない柳くんの表情で、心臓の音がドクンとうるさく鳴った。
明日なんて来なければいいと思ったのは、高校に上がってからははじめてかもしれない。
わたしは、柳くんの顔を見るたびに思い出してしまうから、その背中を見るたびにこの教室の景色が、あの頃と重なって見えるから。
…やっぱり、思い出したくないんだ。
逃げてしまった自分自身を、責めるように人と関わるのをやめて、幸せになっちゃいけないと、そんなことを考えていたけど、心のどこかでは平穏な、それなりの幸せを求めていたんだ。
「うん、」
誰に対してかもわからない罪悪感を飲み込んで、わたしは柳くんの言葉にただただ頷いた。
今は、それしかできなかった。