彼氏がいなくなった
結局成り行き任せで辿り着いたのは、町内のだだっ広い公園のベンチ。
公園と言うよりかは広場に等しい。遊具の一切ないそこは夏休みになれば空町住民が朝ここへきてラジオ体操に勤しむし、朝方の散歩やランニングに人はこの公園をよく使って、前にホームレスのハーモニカ爺さんに飴をもらったことがあったが、日野には今時何があるかわかんないんだから簡単に近寄んなとドヤされたこともあったっけ。
(て、なんで過去形?)
ざり、と砂の音がして振り向くと、飲みものを買ってきた日野が、萌え袖した両手にココアとコンポタをぶら下げていた。
「どーっちだ」
「………ココア」
「ん」
「と見せかけてコンポタ」
「どっちやねん」
普通ここで王道の女子はココア選ぶやろ、とエセ関西弁で告げる日野の口ぶりは極々自然だった。そういやこいつ小学校までは関西にいたんだっけ、と飲み込んで、
手を合わせると「いただきます」とコンポタ缶のプルタブに手をかけた。