恋空rain’s
第1章「夢の終わり、恋の始まり」

「立花!立花雨!」
先生の声が聞こえる。退屈そうな皆の声も。
という事はここは学校?で、今は・・・
「授業中に寝るなよ!」
「はっ!!」慌てて起きる。
「はい、この問題解けー」先生が黒板を叩く。
「えっと...す、すみません」
「先生は謝れとは言ってないぞ?これわかるか」
「う、わかりません。」
『アハハハハハハ』
「雨、これがわかんないなんて少しやばいよ?居眠りとかしてる場合?(笑)」
少しやばいって何よ。この子は仲良しの花ちゃん。クラスの人気者かな。その点私は・・・クラスの笑われ者かな。

───休み時間───

「せっかく良い夢見てたのになぁ・・・」
「あーめっ」
「ぉわっ、花ちゃん。」
「何が良い夢だったの?」
「えへへ・・・ないしょ」
「えー、みずくさいじゃん雨、うちら親友でしょ?」
親友かぁ・・・そんな風に思ってくれてたんだ。
うれしいかも。
「わかった。花ちゃんには負けたよ。教える」
「おぉっ、ナニナニ」
「王子様がね、出てきたの。」
「何、いきなりメルヘン(笑)」
「もぅ、笑わないでよー」
「ごめんごめん、で、誰なの?」
「誰って?」
「王子様だよ。それって好きな人なんじゃないの?」
「うーん・・・わかんないや」
「ナニソレ〜(笑)雨って面白い」
「てか私、好きな人いるし。」
「は?!聞いてないんだけど、誰なの?」
「C組の、青山ショウ君。」
「ショウってあいつ?あいつは・・・」
「え、どうしたの?」
「ううん、何でもない。」
「それでね、花ちゃん」
「ん?」
「3ヶ月片思いしてて・・・今日、告白しようと思うの。」
「えっ、がんばりなよ!」
「うんっ、ありがとう。」

───放課後───

「ショウ、お前、ほんとバカな(笑)」
「うるせぇよバカ」
『アハハ』
「し、ショウ君!」
『・・・・・・』
「えと、あの・・・」
「わりぃ、ソウタちょっと先行ってて。」
「お、おぅ」
隣にいた友達さんは、帰って行った。
「で、何?」
「あ、あのっ、私・・・私、ショウ君のこと、好きです。クラス違うし、仲良くないけどっ」
「うん、ありがとう。」
「・・・」
「でも、俺は好きな奴いるから。ごめん」
「あ・・・そ、そうですよね!あはは、帰りますっ」
ータッタッタッタッ
・・・タッ。
「もう、私ってバカだな。こんな私が、あわよくば付き合いたいって・・・そんな・・・」
ーポタッ。
「雨?うそ、傘持ってきてないよ」
ーポタッ、ポタッ、ザァ───────・・・
「やだな、もぅ。でも、今日は濡れてもいいや」
ザァ────────・・・
「う、うぅ、ひっく、ひっく」
ザァ────────・・・
「ば、ばかぁー!」
「うるさいなぁ」
「えっ、ひっく」
「バカって、誰のこと?」
「・・・バカって、叫んでみたらスッキリするかなって思って」
「バカだね(笑)」
「そうかもね、あ、傘・・・ありがと」
さりげなく、優しいな。
「とりあえず、女の子だし風邪ひくから、
家おいで。」
「でも、今日、さっき会ったばかりだし、初対面だし!」
「いいから、来て。」
ーグイッ。
「わ、わっ、ちょっと待って!」
「・・・・・」
「知らない人の家に行ったらダメってお母さんがっ!」

───家───

「えと、お邪魔します。」
「どうぞ。僕の部屋でいい?」
「う、うん。」
綺麗なオウチだなぁ・・・なんか、全体的に白って感じ。
「何見てるの?早く。」
「は、はい!」
ータッタッタッタッ・・・
「お邪魔します」(2回目)
「あ!ちょっと待って!」
「どうしたの?」
「・・・あんまし片付けてないし、はずかしいんだけど」
え、かわいい。
「ナニソレ〜早くって言ったくせに(笑)」
ーガチャ。
うん、なんか、男の子の部屋って感じ。
壁に・・・たくさん写真が貼ってある。
「これ、空?」
「うん、空。ドン引かないでよ?」
「そんなわけない!すごく綺麗だし、上手に撮れてるよ!」
「あ、ありがと・・・。」
「ん?これは・・・1つだけ、雨の写真があるね」
「あぁ、それ。それは、1番好きな写真なんだ。」
「そうなんだ。虹も写ってる・・・」
この写真、私も好きだな・・・。
「てかその辺座りなよ(笑)」
「あ、うん」
「そういえば、その制服。」
「あ、そこの空ノ下高校だよ。」
「知ってるよ(笑)僕もソラ校の生徒なので」
「そうなの?ごめん、気付かなかった」
「僕、C組の橋本太陽。(ハシモトタイヨウ)」
C組───・・・
太陽?私とは正反対の名前だ。
「これで知らない人じゃないね(笑)」
「そうだね(笑)私はA組の立花・・・です。」
「下の名前は?」
言えない。雨だなんて、変な名前。雨が雨に濡れてました、なんて言えないよ。
「ねぇ、教えて?」
「・・・笑わない?」
「大丈夫、絶対。」
「┈┈め」
「ん?もっかい言って?」
「あめ。立花雨・・・」
「なんだ、かわいいじゃん」
「えっっ?」
え、初めてだ。名前、かわいいって誰かに言われたの。
「良い名前じゃん」
「なわけないよ!だってお母さん、お父さんと出会ったのが雨の日で、だからこんな名前に・・・」
「僕達も、雨の日に出会ったね」
「え・・・そう、だね?たしかに。
だけどお母さん達の場合は、春の静かな雨の日で、とっても綺麗だったんだって。今日のどしゃぶりとは大違い。」
「そっか。じゃあダメかぁー」
「え、何が?」
「何でもない」
まぁ、でもよかった。春じゃないし、綺麗な雨じゃなかったけど、太陽くん・・・出会えてうれしかったな。
「ふぇっくしゅん!」
「あ、寒い?だよね、びしょびしょだもんね」
「ううん、平気だよ」
「うそ。これ着て」
白いパーカー。太陽くんの?
「いいよ!大丈夫」
「いや?」
「いやじゃ・・・」
「じゃあ、着て」
「ありがと・・・」
スー──・・・
なんか、いい匂いする。落ち着くな・・・
「それ、虹の絵が描いてあるんだ」
「あ、ほんとだ」
「虹ってさ、綺麗だけど、雨が降らなきゃ虹の橋なんてできない」
「うん・・・そうだね」
「だから、僕は綺麗な虹を見せてくれる雨が好きなんだ。」
え、なに・・・なんか・・・いやわかってますけど、
こっちの雨が好きって言われたみたいじゃん。
「僕の名前太陽なのにね(笑)」
「ううん、違うよ。雨が上がって太陽が照らすから虹ができるんだよ。だから虹は、雨と太陽の間だよ。」
・・・何言っちゃってるんだ私。
「そっか。じゃあそれあげる」
「えっ?だめだよお気に入りなんでしょ?洗って返すから・・・」
「雨に、着ててほしいんだ。雨だから・・・」
「いいの?大切にするね。」
このパーカー、宝物だよ。雨と太陽の間──
私達が出会った形。
「じーって見るなよ(笑)」
「あ」
「え」
「王子様だ。」
「は!?」
夢に出てきた王子様。うそみたいにそっくりだよ。
ちょっと待って私、今もしかして・・・

好きになっちゃったかも?!!?
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