恋空rain’s
第5章「大丈夫。」


───2週間後────

私は無事退院。今日から学校に行きます。

久しぶりに校門をくぐる。
ータッタッタッタッ・・・

久しぶりに階段を上る。
ータッ。

そして久しぶりのクラス。
ーガラガラガラッ。

教室の扉を開けると、
「あめ〜〜っ」
親友の花が私を見るなり飛びついてくる。

「おはよっ」
私はいつも通りの挨拶を交わす。

「もぅ、心配したんだからね」
花は、いつも通りかわいい。

「えへへ、ごめんごめん」
皆が一瞬こっちを見て、またそれぞれの話を始める。
いつも通りの日常が、はじまっていく。



そして1日が終わり、時は放課後。
今日もいつも通り、花と帰るはずだったのだが、家の用事があるからと足早に帰ってしまった。
私は仕方なく、この間太陽くんにもらった、
携帯番号の書いてある紙を開いて、
にやにやと笑いながら 一人歩いていた。



ードンッ!

「いってぇ・・・」

やってしまった。前を見ていなかった。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃねぇよ、痛いわ、これ、慰謝料だわ。」

「へ?」
私は、驚いた。この状況は、肩がぶつかって不良に絡まれるとゆう、アレか・・・・・

「慰謝料〜、早く払えよ」

「え、いや、あの」

「何?払えねえの?」

「・・・ごめんなさい」
やだ。こわい・・・これはヤバいかもしれない・・・



「じゃあ、体で払えよ」

目の前の男が、ニタニタと笑っている。
こんなに笑顔がこわいと思った人、はじめて。

私は言葉に詰まって 何も言えなかった。

ーグイッ!
腕を強く引っ張られた。

「なぁ、こっちこいよ」
「わっ、やめてください!」

ーバッ。
掴まれた腕を引き剥がした。

「おまえ・・・・・」

男が私を睨んで拳をあげる。どうやら怒らせてしまった・・・


もう、終わりだ。

ーブンッ
「きゃっ」





ーあ、あれ?

思わず閉じた目を、ゆっくりと開く。

私と男の間に、誰かいる。

その人が、振り返って笑う。
「気をつけろよ」



「・・・太陽くん!?」


突然現れた太陽くんの手は、男の振りあげた腕を掴んでいた。

・・・守って、くれたの?
「なんだよお前、離せよ」

太陽くんは、男の言う通り、手を離した。

「何やってるんすか」
「お前には関係ねぇよ」

「関係、あるんですよ」
「は?」

「この子、僕の彼女なんで。」

え、今なんと・・・?えっ、ちょ、えっ???
まじすか太陽くん?
あ、私を守るための演技かな、きっとそうだ。

「だからなんだよ」
男は悪びれもせずに鼻で笑った。
「今から警察でも行きますか」
「あぁ?」

太陽くんに向かって、男の拳が伸びた。
その瞬間、太陽くんの体は歪み、地面に崩れた。男に殴られたんだ。

「太陽くん!!」


「・・・痛いんですけど」
太陽くんは立ち上がって、殴られた頬を片手でおさえた。

「ざまあみろ、わかったら弱っちぃ彼氏は帰んな。」

「┈┈┈┈な」

「あ?」



「俺の女に手出すな」

そう言った太陽くんは、怒っているのだと、
後ろ姿でもわかった。




ードスッ
太陽くんは、地面に崩れた男を見下ろしていた。な、殴ったの?

「・・・っ」
「まだやりますか」


男は軽く舌打ちをして、去っていった。
というか、逃げていった??

呆気にとられて黙り込む私に、振り返った太陽くんは、苦笑いしてこう言った。

「つい、頭にきちゃって」
太陽くんからは、怒りが消えていた。
必死に、笑顔をくれてるんだね。


同じく学校帰りだった太陽くんは、
私の声を聞いて駆けつけたのだと言った。

「ケガはない?」
太陽くんは心配そうに私を見つめた。

私は、大丈夫だと伝えて、それから、
何度目かの“ありがとう”を伝えた。
太陽くんは、ほっとしたような、照れたようなそんな笑みを見せていた。

「太陽くんこそっ、さっき殴られてたよね?ケガ・・・」
「大したことないよ(笑)」

太陽くんのほっぺたには、赤い傷があった。
・・・ばか。大したことあるよ。。

私は、ポケットに入れていた絆創膏をだして、太陽くんの頬に貼った。

「よかったのに・・・」
「よくない。」
「・・・ありがと」
「私、ドジだからよく転ぶの。だから絆創膏持っててよかった(笑)」





私は、ピンチの時に助けてくれる、
まさにヒーローみたいな王子様を、
心のどこかで探していたのかもしれない。


それが、君なんだね。
それが、太陽くんなんだね。




「ねぇ、何かあったら連絡してって言ったじゃん」
僕が見つけなかったら・・・と、太陽くんは手を前に組み言った。

「ごめん、呼んでいいかわからなかったから・・・」
「雨ちゃんはわからないばっかりだね(笑)」
たしかに、太陽くんの言う通りだ。
私は、困ると、たくさん考えるくせにわからない。

「ごめん」
私はそんな情けない自分が申し訳なくて、
謝ることしか思いつかなかった。

「わかんない時も、僕を頼って?」
そう言った太陽くんの瞳は、相変わらず真っ直ぐだった。

「・・・いいの?」
「てゆうか、絶対頼って」
「絶対?」
「君の大丈夫は、たまに大丈夫じゃないから」
「はは・・・太陽くんには何でもバレちゃうんだね」
「無理とかしたら、俺許さないからね」

ー2回目、俺って言ったの。
いつもの太陽くんより、真剣だってことが伝わる。
いつも僕って言う人が、俺って言うと、
なんだか男の子じゃなくて男って感じだね。

「うん、約束する。」
太陽くんは嬉しそうに笑った。
いつも見せる優しさの中から、強さが覗いて、やっぱりかっこいいなって思ってしまう。
何度も好きを確認させられる。

「じゃあもう1個約束して?」
「何?」

「雨ちゃん危なっかしいから、これから学校、一緒に帰ること。」
「え??」

「拒否権とか、ないからね」

うれしい・・・学校でも会えるんだ・・・。

「・・・はい。」


この時、なんで太陽くんのいるC組に私が行かないかは、太陽くんは聞いてこなかった。
ショウ君のこと、気づかれてたのかな?

ううん、違う。

きっと私達が出会った雨の日が
太陽くんにとっても特別なんだ。
そう思ってくれてたら、いいな。

「下校以外は雨の日限定ね、
会ってばかりだと好きな気持ちも薄れちゃうから。」
「えっ・・・・・・・・」
そんな・・・・・・・・

「嘘だよ♪なわけないじゃん(笑)」

「・・・いじわる。」
でも、意地悪な君も好き。

「本当は休み時間とか、昼休みにも会いたいんだけどね、雨ちゃんドジっぽいし(笑)」
「えっ、そうなの?」
ー私もだよ。

「雨の日って、特別にしたくてさ」

「私も、そう思ってた。」

「だからもう少し、このままでいいよね?」

「う、うん・・・」


本当は少し、寂しかったけど。

私と会う日を、特別だって言ってくれたから。

それだけで充分だって、思ってるんだ。


この日、太陽くんは私を家まで送ってくれた。最後までちゃんと私の事を気にかけてくれた。本当に優しいんだね。


大好き。
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