恋空rain’s
第8章「相合傘」


ーピコンッ。
連続攻撃はつらい。







「なんで?」













ーなんで?ー

どういう、意味?



「なんで?とは」
ーポチッ。





ーピコンッ。
「メール、なんで?」







メール・・・だめだったのかな。
迷惑だったとか?

「何かあったら連絡して」

何もないのに、連絡して。迷惑、なの?




「ごめん」
ーポチッ。






ーピコンッ。
「違う」







えっ?違うの?・・・謝らなくていいってこと?







「この前のこと・・・ごめん」
ーポチッ。









ーピコンッ。
「違うから」






なに、違うからって。やっぱり全然わかんないよ。
返ってくるのは短い文面。会って話すのとは感じが違って、君の言いたいとすることがわかんない。





「違うってどういう意味?」
ーポチッ。





ーピコンッ。
「好きじゃなくなったから、じゃない」









あ、そういう意味か。
うん、よし、わかんないことはちゃんと聞こう。なんとなくで話したくないから。






「なんで?」
ーポチッ。

こっちも、送ってみる。
恋のかけひきっていうの?やってみたくて。



ーピコンッ。
「ん?なんでとは」








───好きだけど付き合えない────

「好きだけど付き合えないとは」
ーポチッ。













既読がついてから、返信がくるまで。
ドキドキして、こわくって。








ーピコンッ。
「こわいから」








ーえっ?・・・こわい?何が。なんで。








「こわい、とは」
ーポチッ。





ーピコンッ。
「ねぇ会って話さない?」










・・・え、ぇ?急に会うなんて、むりだよ。
「雨の日じゃないよ、今日」
ーポチッ。














ーピコンッ。
「晴れの日も会いたいんでしょ?」






もう、意地悪。本音の痛い所つかないでよ。




ーピコンッ。
「ごめん、いじわるいった笑」








・・・わかってますーだ!笑ってたんでしょうね。君って「優しい」「怒る」だけじゃなくて、「いじわるする」っていうコンテンツも持ち合わせてるんだね。





「メールじゃ話せない?」
ーポチッ。








ーピコンッ。
「はずかしいの?」








「違うし!」
ーポチッ。







ーピコンッ。
「ごめんって、怒るなよ笑」









「そういうとこ」
ーポチッ。





ーピコンッ。
「きらい?」






ーねぇだからもう!なんなの、きらいなわけ、ないでしょ。







「好きって言わせようとしてるの?」
ーポチッ。


ここはあえて冷たくしちゃって(笑)




ーピコンッ。
「別に笑」




うわ。くっそぉー!!!




「すなおじゃないね」
ーポチッ。







ーピコンッ。
「そっちもね」










なんだろこれ。楽しい。
あ、でも目的は違うのに。


「すなおになるためにメールしたの」
ーポチッ。






ーピコンッ。
「夜だしアリなんじゃない」







そんな問題ですか、夜でも雨は降るよね(笑)



ー私は、会いたいかも。
だけど君から、会いたいって言われたいんだ。





「会いたいの?」
ーポチッ。





ー君次第だよ?これはいじわるじゃない。
ねぇ、会いたいって言って?












ーピコンッ。






「・・・会いたい」










もう、そういうとこだよ、ほんと。

ちゃんと言ってほしいこと言ってくれるから、今までの気持ちも全部。
君ならいいやって思えちゃうの。










「私も」
ーポチッ。
















ーピンポーン。

「はーい!」

ーガチャ。

「はぁ・・・はぁ・・・・・・」




「えっっ」





「ごめん、本当に会いたかったから・・・」






そんなこと、言わないでよ。









うれしすぎるよ。









「走ってきたの?」

「うん、いてもたってもいられなくて」





そんな。
一言一言が、こんなにうれしいなんて。

息切れしながら、悔しそうに照れてる君の、今の言葉、ずっと胸にしまっておきたい。








「とりあえず、外寒いし、入る?」
今夜は、両親いないし。と付け加えて、
私は太陽くんを家の中へと招き入れた。








太陽くんは、家の中を見渡して、
「おぉ」
とぶつぶつ言っていた。




ータッタッタッタッ。
「ここ、私のお部屋。はじめて、だよね?」

うん。と言った君は、すこし嬉しそうに見えた。




「入って」
「お、邪魔します」




私の部屋は淡いパステルカラーだったから、男の子には慣れていない空間かもしれない。


「そこ、座りなよ」
私はベッドを指さして、言った。
「いいよ、僕はここで。」
太陽くんは、ベッドの下に腰を下ろした。









────こわいから────

あれ、どういう意味なんだろう・・・?







「こわいからって、言ってたよね」
単刀直入な質問を、ぶつけてみることにした。

「・・・」
「それって、どういう意味?」

「・・・」
「あ、怒ってるとかじゃないよ!」

「うん」
「教えて、ほしいの」

「聞きたい?きっと情けない話になるよ」


「わかりたいから。聞かせてほしいの」


あの時みたいに、まっすぐじゃなかった。
君は私から目をそらして、そのまま口を開いた。


「雨ちゃんから好きって言われた日、自分でもびっくりするほど嬉しかったんだ」

「うん、ありがとう」

「この前も、付き合ってって言われて、嬉しかった」

「・・・うん」

「でも、迷った末、思ってしまったんだ。」

「こわいって?」

「そう、こわかった」


「私のことが?」


太陽くんは、首を横に振った。

「付き合ったら、雨ちゃんを守り続けなきゃいけない。それは彼氏の役目だと思うから。」

「・・・うん」


「それができるか、不安で」

そんなことない。太陽くんはいつだって、
私を助けてくれたし、守ってくれた。
私がわからなくて間違いそうになった時、
正しい方向へ導いてくれた。



「それに」
「それに?」


「付き合ったら、別れる時がくる。」
「え?」

「だから、別れるなんて悲しいことが終わりにあるなら、僕は嫌だと思った。」


「・・・・・・・・・」

私達の今に終わりが来る、そんな時来るのかな、想像つかないや。
私の君への好きにも、終わりがくるの?

そんなの、嫌だよ。絶対・・・




「その時きっと僕は、君を忘れられないから。」

「忘れないように、そばにいるよ私が」


「だから、別れない保証なんてあるの?」


「好きな気持ちに保証なんていらないよ」

「つらくなるのは嫌なんだよ」

「・・・男らしくない」

「だから言ったじゃん、情けない話だって」

「私はつらくなっても大丈夫じゃないけど平気だよ。」

「意味わかんねぇよ」

「私をつらくさせるのが太陽くんなら、それでもいい。」

「それは俺が自分を許せねえよ」

「ムキになると俺って言うよね」

「どっちでもいいよ」

「うん笑」

「それにいつも守れる保証もない」

「じゃあ私、強くなるから。」

「強くなんてならなくていいよ」

「守られてばっかりもやだ」

「それが俺の仕事だし」

「じゃあ大丈夫だよ」

「何が大丈夫なの?」

「そうやって言ってくれるのが証拠だよ」

「・・・なんだよ・・・」

「いいよ別に」

「何が」

「好きじゃないならもういいから・・・」


「だからそれは違うって言ったじゃん」

「じゃあなんでそんなにこわがるの?」


「好きだから、こわくなんだよ」

「・・・好きなら受け止めてよ」


「だからそれが不安で困ってるんだろ」


「じゃあもういい」

「は?」

「もういいから、抱きしめて」

「えっ!?」


「何もいらないから、黙って抱きしめて」


「馬鹿なのかよ」

「馬鹿でいいもん、だから早く」


私は、強がっていた。言葉に言葉を重ねて、その全てが悲しかった。不安でたまらないのに、君の迷いを消したくて、それなのに・・・。

泣きそうだよ。




ーギュッ。

「これでいい?」
「・・・よくない」
「何がだめ?」
「優しいからだめ。今は強く抱きしめて・・・」
「わがままだな笑」
「そっちはいくじなし笑」
「すなおじゃないよな」
「だからそれはそっち・・・」

ーチュッ。














__はっ?///// は、え、は???





「ちょっ、やめっ・・・」
ーチュッ。






「今度はこっちのわがままさせて」

ーやだ。見つめないで、爆発しそうなんだから。顔赤いのバレちゃう・・・


「だめ」

「拒否権とかないから」


「・・・意地悪。」

「それ以上何も言わせない」
君が私の顎を持ち上げて、意地悪に笑う。


「でも・・・」
「・・・嫌だ?」
そんな悲しそうな顔しないでよ───。




もう、感情が抑えきれなくなっちゃう・・・





ーチュッ。
「んっ、やめ・・・」

ーチュッ。
「ねぇ・・・」



「・・・やめない」


「ばか」


「今知った?笑」




ーチュッ。









「・・・好きだよ。」






「好きだけど付き合えないんでしょ?」



「雨が、迷いをふっとばしてくれた」

「・・・じゃあ、」












「付き合ってください」










そんな分かりきった答え。











「はいっ」








その時、僕達は気づいていなかった。
あの時、私達は気づいていなかった。













雨が降っていたことを。






私達はこれからも、わかりあって、ぶつかり合って、それでもちゃんと私達の上には同じ空が見守ってくれてる。
雨の日も晴れの日も、嵐だって何だって、
私達は2人で、乗り越えていくんだって思えた。


そうだ、私達は、








相合傘の下で、好きを確かめ合うんだ。
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