君と二人の201号室





「着いた。ここだよ、ここ」

「ほぇー、おっきいマンション……」



目の前には、大きなマンションが建っていた。

こんなところに住んでるんだ……。…家賃、うちの何倍だろう……。



「拓海さん、家賃いくら払えばいいですか?」

「そんなのないよ。好きで一緒に住みたいだけだし。いてくれるならそれでいい」

「そんなわけには……!」

「じゃあ、毎日ごはん作ってよ。朝と夜。昼はお弁当がいいな。俺、料理できないんだ」

「…なんか、意外です」

「近所のスーパーか仕事帰りのコンビニで、冷凍食品か弁当買って食べてる」

「……栄養バランスは、良くなさそう…」



私にも出来そう…っていうか出来ることでよかったけど、本当にそれだけでいいのかな…。家賃もないって言われちゃったし、何だか割に合わない気が…。本当にいいのかな…。



「本当に、いいんですか?」

「いいって言ってるじゃん。往生際悪いぞ~」

「そんなんじゃないですけど…」

「ま、何でもいいや。早く中入ろう」

「は~い…」



階段を見つけたので、そっちの方に行こうとしたら、拓海さんに止められた。



「菜帆、エレベーターがあるから。…そもそも、一階じゃないって考えはなかったの?」

「…はっ!確かに!」



普段エレベーターを使う文化なんてないから、つい……。



「…まぁ、二階だけど……。こっちだよ、着いておいで」

「面目ない…」



…居候になるっていう時点で面目なんてないだろうけど、さすがに今のは恥ずかしかったな……。…呆れられ…



「菜帆、ほんっと、面白いね」



…てなかった。よかった…。


だって、笑ってるもん。…楽しいなら、何よりです。




< 10 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop