君と二人の201号室
*
「着いた。ここだよ、ここ」
「ほぇー、おっきいマンション……」
目の前には、大きなマンションが建っていた。
こんなところに住んでるんだ……。…家賃、うちの何倍だろう……。
「拓海さん、家賃いくら払えばいいですか?」
「そんなのないよ。好きで一緒に住みたいだけだし。いてくれるならそれでいい」
「そんなわけには……!」
「じゃあ、毎日ごはん作ってよ。朝と夜。昼はお弁当がいいな。俺、料理できないんだ」
「…なんか、意外です」
「近所のスーパーか仕事帰りのコンビニで、冷凍食品か弁当買って食べてる」
「……栄養バランスは、良くなさそう…」
私にも出来そう…っていうか出来ることでよかったけど、本当にそれだけでいいのかな…。家賃もないって言われちゃったし、何だか割に合わない気が…。本当にいいのかな…。
「本当に、いいんですか?」
「いいって言ってるじゃん。往生際悪いぞ~」
「そんなんじゃないですけど…」
「ま、何でもいいや。早く中入ろう」
「は~い…」
階段を見つけたので、そっちの方に行こうとしたら、拓海さんに止められた。
「菜帆、エレベーターがあるから。…そもそも、一階じゃないって考えはなかったの?」
「…はっ!確かに!」
普段エレベーターを使う文化なんてないから、つい……。
「…まぁ、二階だけど……。こっちだよ、着いておいで」
「面目ない…」
…居候になるっていう時点で面目なんてないだろうけど、さすがに今のは恥ずかしかったな……。…呆れられ…
「菜帆、ほんっと、面白いね」
…てなかった。よかった…。
だって、笑ってるもん。…楽しいなら、何よりです。