君と二人の201号室


「菜帆、俺と結婚してくれる?」

「…でも、」

「俺とじゃイヤ?」

「…そんなわけ…ないです…」



だけどいつか、拓海さんにまで迷惑がかかるかもしれない。

…本当なら、「一緒に住む」なんてことも、承諾しない方がよかったはずなのに。

私はきっと、どうにかしてた。



「…いつか…拓海さんや…拓海さんのご家族にも、何か迷惑がかかるかもしれません…。それはイヤです…」

「…迷惑かけてよ」



拓海さんは怒ったように言う。

そんなこと言われても…。



「菜帆ちゃん」

「はいっ!」



びっ…くりした…。


拓海さんのお父さんが、急に口を開いた。



「『家族』っていうのは、本来、迷惑をかけあうものなんだよ」

「…そうなんですか…」

「他の家はどうなのか知らないけど。うちは、迷惑をかけあっていいんだ。むしろかけなきゃ。君は、『家族のカタチ』を少し知らなすぎる」

「…そう、ですね…」



確かに、本当の家族なんて知る由もない。

今まで、『本当の家族』なんて呼びたい人、いなかったのだから。



「学校は今、冬休みだよね?」

「はい…」

「冬休みの間、ここに住んでみて、ちゃんとした『家族のカタチ』を勉強してみようか」

「…へ?」



何て唐突な…。

なんだろう、本当にこの家族、ぶっ飛んでる気がする…。


っていうか、いいのかな…?




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