君と二人の201号室


なんでかわからないけど、ポロポロ出てくる涙。

それに気付いたのか気付かずか、ポンポンと背中をさすってくれる拓海さん。


…私にもわからない何かを、見透かされてるみたいな。

…大切な人って、ううん、大切にした方がいい人って、多分、こういう人なんだろうな。

私の心に、寄り添ってくれる人。



「……これは本気でヤバいな…」

「拓海さん…?」



ボソッと何かを呟いたと同時に、拓海さんの腕の力が緩められる。

何だかこのまま離れてしまいそうで、それは寂しいから、私はギュッっとしがみつくみたいな格好になってしまった。



「な、菜帆、ちょ、これは、もう…。…あぁ、うん…」



何やら一人でブツブツ言う拓海さん。

言っている意味は、残念ながらわからない。


頭一つ分上にある拓海さんの顔を見ると、何だか複雑そうな表情をしていた。


目が合ったので「どうしたんですか?」という意味を込めて首をかしげると、拓海さんは「なんでもないよ」という風に首を横に振って、私の背中にまわした腕の力を、さっきより強くしてくれた。


もっと、ほしい。

愛情が。ぬくもりが。


…どんどん欲張りになってる。

それで、いいのかな。

いつか、歯止めがきかなくなっちゃうんじゃないかな。


そう思うと、怖い気がする。

だけど今は、このぬくもりをなくしてしまうことの方が怖い。

…なんて矛盾。


私は、ワガママになってしまいそうで…怖い。

欲張りでワガママで…今までの自分とは、真逆の自分。


…「なってみたい」って思うのは、もしかしたら悪いことかもしれないけど、拓海さんのそばにいると、そんな気持ちだってどんどんどんどん湧いてきちゃうんだ。




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