君と二人の201号室
…いい匂いだなぁ…。拓海さんの匂いって。
安心する。
このまま目を閉じたら、すごくよく眠れそう…。
*
「…ほ、菜帆…。なーほ!」
「はい…」
「おーきーてー。おせち、できたって。食べよ」
「え…?」
少しずつ覚醒していき、私は現状を把握した。
…なにやってんだろう、私。
「ご、ごめんなさい…。お手伝いとか、できなくて…」
「ふっふっふー。菜帆ちゃん、寝顔可愛かったね~」
瞳さんのいたずらな笑顔。
…恥ずかしいけど、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
「…大丈夫だよ。誰もそんなことは気にしてないから。そんなことより、拓海の腕の中は寝ちゃうくらい安心できる…っていうのが知れて、よかったよ。拓海のこと、それなりに信頼してるんだね」
「…それなりに、どころじゃないです…」
拓海さんのお父さんが少しだけ茶化すように言ってくれたけど、私にとってはかなり真面目な話なので、ちょっと訂正しておいた。
「それなりに」なんてもんじゃない。
私の安心要素の約90パーセントくらいは、拓海さんが占めていると思う。
…それくらい、大切。
最近、拓海さんにどんどん依存していってる気がする。
…それが、いいことなのか悪いことなのかわからないけど。
だけど、私の中が拓海さんでいっぱいになるのは、何だか嬉しいのは事実。
…もし、拓海さんにまで見放されてしまったら
――今度こそ、私は…消えてしまうかもしれない。
『心』って、厄介だ。