君と二人の201号室
「顔は…写真ある…。ちょっと待ってて」
そう言って、由奈ちゃんはカバンからスマホを取り出して、少しの間操作すると
「ほら、この人」
…と、画面を指差して私たちに見せてくれた。
「うわぁ…超イケメンじゃん…」
「すごい…拓海さん並みに整ってる…」
…けどこれ、隠し撮り?
…身に覚えがある。地味に怖かった。
「年は私たちの1個下」
「下なの!?」
「うん。オーナーの息子さんで、よくここを手伝ってるんだ」
「あ、そういうこと…」
でも…ということは、中学3年生。受験生じゃん。
「でね、うちの高校受けるんだって!」
「お、よかったね」
「でも、絶対モテるから…前田くんが高校入る前に、少しでも私のこと意識してもらいたい…!…あわよくば、彼女になれたらなぁ…なんて」
「…可愛い」
由奈ちゃんが、私史上最高に可愛い。
頬を赤く染めている彼女は、女の子らしい見た目が、さらに3割増しくらい可愛くなってるように見える。
いいな、なんか。恋する女の子って。
…私も、拓海さんといるときとか拓海さんのことを考えてるときは、いつもよりちょっと、女の子らしくなれてるのかもしれない。
…そう思うと、恥ずかしいから、拓海さんといてもどんな顔すればいいのかわからないし、拓海さんのことを考えるのにも、少し臆病になってしまう気がする。
「だから料理上手の菜帆!お願い!私を助けて!…私、料理下手で……」
「まかせて!一緒に作ろう!」
「あ、じゃあ菜帆、私にも教えて。自分用にだから手抜きでいいけど」
「もちろん!みんなで作った方が楽しいもん!」
やった。今度3人でチョコ作るんだ。
楽しいだろうなぁ。