君と二人の201号室
そろそろ私も拓海さんの顔を見たかったので、顔を上げる。
…恥ずかしいから、ゆっくりと。
そこには、スマホを手に持っている拓海さん。
…まさか、拓海さんも撮ってた…?
しかも、音しなかったから無音カメラ…!?
「あ、菜帆。顔見せてくれても…すごくいい。うん。鼻血モノだね、これ。お友達さん、天才」
「ありがとうございます!お礼です!」
「最高」
…由奈ちゃんと拓海さん、なんかテンションが一緒だし…。
紘子ちゃん、何とかしてもらえませんか…!
縋るように紘子ちゃんを見つめていると、目が合った。
…けど、無言でニコニコしてガッツポーズされたので、恐らく「ファイト…!」とでも言われたんだと思う。
見放さないで、紘子ちゃん。
「菜帆、俺のスマホのカメラフォルダが菜帆の写真でいっぱいなんだけど、どうするつもり?」
「普通に消してください…」
「お、すごい。菜帆カレさん、連写してる…!」
「可愛い菜帆を、一瞬でも逃したくないからね」
こんなことを言われても、もう、ただただ恥ずかしいから勘弁してほしい。
そもそも、何しに来たんだっけ?この二人。
「…そうだよチョコレート…!」
「「…あ」」
いや、二人とも忘れてたの…?
元々そのために来たんだよね…?
…忘れちゃダメでしょ。まぁ、私も忘れてたから、あんまり人のこと言えないけど。
…そして、そんな私たちを気にせずに、拓海さんはスマホのカメラで連写し続けていたらしい…。