君と二人の201号室
*
「さて。おいしいくて、可愛いのを作りたいんですよね?」
「「はい」」
「…〝真面目に〟やればきっとできるので、しっかりやりましょー」
「「…ハイ」」
さっき遊ばれた失態を反省し、今度はちゃんと釘を刺しておいた。
…ここでふざけられたら、本当に収集がつかないし。チョコ作りなんてできなくなるだろうし。
「今回は簡単なガトーショコラとトリュフを作りまーす」
「え、二個も作るの!?…そんなにできるかな…」
「由奈、菜帆がいるんだから大丈夫でしょ?一緒に頑張ろう!それで、好きな人に渡そう!チョコレート!」
「うん…!」
「由奈ちゃん、丁寧にやればそんなに難しくないから、そこまで構えたりしなくて大丈夫だよ」
不安そうな由奈ちゃんを、私と紘子ちゃんで励ます。
あんまり焦っても、失敗しちゃうかもしれないからなぁ。
「…そっかぁ~……。…おいしいの食べてもらいたいし…。頑張らなきゃ、だよね…!」
気合いを入れ直したかのような由奈ちゃんを見て、私も安心した。
「うん。じゃあ、まずはチョコを溶かすとこから始めよっか。湯煎っていう方法があってね。お湯を入れたボウルに、もう一つ、一回り小さめのボウルを重ねるんだ。そこに、刻んだチョコを入れるの」
「…じゃあ、まずはチョコを刻めばいいかな?」
「うん。あ、でも、意外と力要るから…。包丁で切る…っていうよりかは……。…これ。ピーラーで削った方が早いかも。チョコが飛び散らないように気を付けて」
「わかった。削ったやつはボウルに入れればいい?」
「うん。お湯が入らないようにも気を付けて。使えなくなっちゃうから」
「うん!」
元気よく頷いた由奈ちゃん。
本当に、もうすっかり不安は拭えたらしい。
よかった。
紘子ちゃんもニコニコしてる。
目が合った紘子ちゃんに私がVサインを見せたら、紘子ちゃんも同じようにしてくれたから、嬉しくなった。
「紘子ちゃんも、チョコ削ってくれる?」
「まかせて」
眩しい笑顔で返事した紘子ちゃんは、ものすごく頼もしく見えた。