君と二人の201号室
*
「…菜帆、天才」
「…ネットで調べたレシピだけどね」
「私が作ってこの完成度になるなんて、菜帆の教え方がうますぎる」
「…それは、何よりです…」
無事に完成したガトーショコラとトリュフを見て、由奈ちゃんと紘子ちゃんは目をキラキラさせて、食い入るように見つめている。
「…菜帆、アタシ、こんなの作れるなんて思ってなかった…」
「紘子ちゃんまで…。まぁ、喜んでもらえたならよかった。あ、じゃあ私は、拓海さんに渡してくるね」
「…今日バレンタインじゃないのに?」
「一刻も早く食べたいって言われたから」
「いってらっしゃい」
二人に見送られ、拓海さんの部屋の前に立つ。
…自分でも、割と上手くできた…と思う。
やっぱり、「おいしい」って言ってもらいたい。
そして、拓海さんが笑ってくれたら、それでいい。それがいい。
――コンコン
「はーい」
「失礼します…」
「あ、菜帆!チョコできた!?」
「あ、はい…。持って来ました…」
…拓海さんに、何だか犬の尻尾みたいなのが見える気がする。
そしてそれは、ものすごい勢いで振られている。(ように見える)
「え、すご…。何このクオリティ。菜帆ほんと最高」
「いや、あの…」
「食べていい?食べたい」
「あ、はい。もちろん…!」
ラッピングまでしたチョコレート各種を、拓海さんは嬉しそうに眺める。
…私も嬉しい。