君と二人の201号室


「菜帆、あーんしてよ」

「え!?」



…それはいささか、ハードルが高すぎじゃないでしょうかね…拓海さん。

私にはレベルが高すぎます…!


それでも、拓海さんは取り消しはしないわけで…



「はーやーくー」

「…」



むぅ…。可愛いじゃないですか…!

…そうだ、拓海さんだと思わないで、小さい子だと思えば…!



「わかりました。口開けてください…」

「はーい」



拓海さんが大きく口を開ける。

その口の中に、トリュフを一つ入れる。



――パクッ



「…!」



私の手まで!私の手まで食べた!?

…心臓、ドキドキどころかバクバクいってるんですけど…。



「…ん、おいし」



拓海さんに食べられた指先のあたたかさがなかなか冷めなくて、一向に動悸が収まらない。

な、なんてことをしてくれるんだ、この人は。


…ニヤニヤしてるし。絶対わざとなんでしょう?



「菜帆、顔赤いよ?どうしたの?」

「…拓海さんの、せいじゃないですか…」

「え~。なんのこと?」

「…自覚してるくせに…」



わかっててわざと聞くなんて、意地が悪すぎると思うんですけど…。



「ふふ、ごめんごめん。菜帆があまりにも可愛いから、つい。からかいたくなっちゃって。許して」

「許さないことは、ないですけど…」




< 120 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop