君と二人の201号室
あぁ、こんな歯切れの悪い答え方しなくてもいいじゃないか、私。
普通に許すのに。
…ドキドキするけど、変態みたいだけど…もっと触れてほしい、なんて思っちゃったし。絶対本人には言わないけど。
「うん、拗ねてるのも可愛い。尊い。誰にも見せたくない。あの友達たちにも。その顔、絶対俺の前だけにしてね」
「…自分の顔なんて、鏡見ないとわからないじゃないですか…」
拓海さんが言ってくれたことが嬉しいのに、少しひねくれたことを言ってしまう。
…嬉しいのに。
「じゃあ、とりあえず気を付けて。それもできない気がするっていうなら、この部屋に閉じ込めて、菜帆を誰の目にもさらさない。いや、もう誰にも見せたくないけど、なけなしの常識で何とか堪えてるだけだけど」
「…善処、します」
なんだろう、この人は。
…壁一枚隔てたところには、由奈ちゃんと紘子ちゃんがいるのに。
…こんなことをしてるなんて知られたら、恥ずかしくてここから出られない。
だけどそんなこと言ってしまったら、拓海さんによってバラされて、二人に散々からかわれるんだろうなぁ…なんて考えて、現実逃避する。
「菜帆、いいこ。ちゃんと守ってくれなきゃダメだからね?」
「…はい。…あの、二人が待ってるからこれで…」
「ん~。もうちょっと一緒にいようよ」
「でも…」
二人をあのままあそこに残しておく時間、既に長すぎじゃないかな。
人の家で、どうしたらいいか、困ってないかな。
「一緒にいたい。ダメ?」
――二人とも、ごめんなさい。
「わ、かりました…」
もうちょっとだけ、この人と一緒にいさせてください。