君と二人の201号室
*
さて、あれから数日経ち、今日はバレンタイン当日。
…由奈ちゃんの決戦の日だ。
放課後、由奈ちゃんがバイトに行ったとき、彼にチョコレートを渡すらしい。
由奈ちゃん、頑張って…!と、心の中で念を送る。
「渡せたら連絡するね。絶対渡す!」
由奈ちゃんがそう言っていたので、紘子ちゃんと一緒に、ドキドキしながらスマホの液晶画面を見つめる。
きっと私たちは由奈ちゃんと同じくらい緊張してる…なんて少し思うけど、絶対由奈ちゃんの方が緊張してる。
「由奈、大丈夫かな…?」
「渡せてるといいけどね…」
由奈ちゃん、今日一日、ずっと上の空だった。
…そのぐらい、頭の中がいっぱいなんだろう。
とりあえず本人も言ってたから渡せるといいけど、どうせなら上手くいってほしいなんて思うのは勝手なんだろうか。
でも、友達の幸せは、やっぱり私も願ってる。
由奈ちゃんの笑顔が見たい。
あの写真の中の人の隣で笑ってる由奈ちゃんの姿が見たい。
…なんて、同じようなことがグルグルグルグル、私の頭の中を占拠してる。
「…ね、菜帆はやっぱり、彼氏さんにチョコ渡すとき、緊張した?」
「…うん、まぁ。なんか…その…。私は普段から、お菓子とか料理とか食べてもらってるけど…バレンタインチョコ…って、なんか特別な気がする。もう一回告白したみたい…って、そのぐらいの勇気を使い果たしたな、私は」
「そーゆーもんなんだ…」
試作したときも食べてもらったけど、今日も朝ちゃんと渡してきた。
…すごく喜んでくれて嬉しかったけどものすごく緊張したし、また拓海さんが暴走したからなだめるのが大変だった。
紘子ちゃんは私の答えを聞いて、ちょっとびっくりしたようにしてた。
――ピロン
「「!!!」」
音が鳴ったスマホに表示されていたのは、可愛らしいウサギが二匹いて…ハートマークを持っているスタンプだった。