君と二人の201号室
会いたくなかった人
季節はまた巡り、4月。
高校2年生になる。
基本、私の通う学校はクラス替えがないので、二人とクラスが離れる心配もないから一安心。
由奈ちゃんは、もうすぐ彼氏さんが入学してくるとかで、ウキウキしてる。
…羨ましい。
私と拓海さんも同じ学校だったらよかったのに。
私の誕生日も拓海さんの誕生日も同じ3月だったけど、拓海さんの方が早かったから、私と拓海さんの年の差が縮む日はなかった。
…朝家で会ってきたけど、始業前のHRなのに既に「会いたい」なんて思ってる私は重症だろうか。
ぼんやりと愛しい人のことを考えてたから、先生が喋ってる声なんてあんまり聞こえてなかった。…というか、ほぼ聞き流していた。
「…というわけで、進路調査票、今月中に出しておけよー」
どうやら今年もお世話になるらしい担任の先生の、聞き捨てならない一言で私は現実に引き戻された。
…進路、か……。
考えたことなかった…と言ったら噓になるけど、前までは就職するものだと思ってたし。
正直なところ全くわからないし、もう何も想像つかない。
…唯一未来のことで願うならば、拓海さんとか由奈ちゃんや紘子ちゃんが、私の未来にいたらいいな…って、そのぐらいで。
他のことなんて思いつかない。
今まで…ちょっと言い方かっこよすぎるかもしれないけど、『今』を生きるのに必死だったから。本当に。切実に。
だから先生、そんなこと急に言われても、どうしたらいいかわかりません…!
一人うだうだ悩んでいてもどうしようもないから、とりあえず帰ったら拓海さんに相談しようと思った。
そういえば、由奈ちゃんと紘子ちゃんはどうするんだろうな、進路。
…バラバラになるかもしれない。それは少し怖い。
…怖いけど、そろそろちゃんと向き合わなきゃ。