君と二人の201号室





家の帰ると、いつも通りまだ誰もいない。

拓海さんは仕事だから。


寂しさを紛らわすように、ソファーに飛び込んでうつ伏せのまま体を沈ませる。

意味もなくテレビをつけると、ドラマの再放送が流れていた。


テレビの音をBGMにして、今日学校で言われてしまった進路のことをぼんやりと考える。


…ほんと、どうしよ。


やっぱりいくら考えてもピンとくることが思い浮かばなかったから、とりあえず晩ごはんの買い出しに行こうかなと思い、ソファーから起き上がる。


財布、エコバック…あー、あとチラシ見なきゃ。

何が安いかな…。


チラシとジーッとにらめっこしながら、晩ごはんのメニューと今日買うものを考える。

大体目星を付けて、チラシにボールペンで丸印をつける。


必要最低限のものを持って、私は玄関へと向かった。


いつも履いているスニーカーを履き、靴紐を結んで玄関ドアを開けた。



――ゴン!



え、噓…。

今何かに当たった…?



「いったた…」



女の人のうめき声。

どうしよう、人に当たったの…?



「あの、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」



私は慌てて、女の人に駆け寄る。



「えぇ、だいじょ…」



顔をあげた女の人を見て、私も相手も、お互い固まる。


…まだこの世に存在したんだ、この人。

――お母さん。

この世界で一番、私が会いたくなかった人。



「菜帆…」

「…」

「…元気にしてた…?」



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