君と二人の201号室
――拓海さん、お願い。出てください…!
『留守番電話サービスに接続します』
こんなときに、頼みの綱はつかまらないものなんだなぁ…と、しばらく思った。
もう既に、買い物に行くどころではなくなっていた。
かといって、家の前にまたあの人がいたら困るから、帰る気にもなれなかった。
…どうしよう。
こんなときに限って、何もすることがない。
することがないから、どうしても暗いことを考えてしまう。
私の中のモヤモヤがグルグルグルグルしながら、頭の片隅では、何か『すること』を探してる。
だけど、そんなものは中々見つからなかったから、ぶらぶら歩いて景色を見て気を紛らわすことにした。
しばらく歩いていると、小さい公園があった。
…誰もいない。
歩いていたら喉が渇いたから、公園の水を飲む。
…そういえばここ、どこだろう。
闇雲に歩いてたから、道なんて覚えてなかった。
スマホの時計を見ると、午後5時半。
あぁ、どうりで薄暗くなるはずだ。
もうすぐ、拓海さんの仕事が終わる時間だなぁ…。
でも、晩ごはんまだ作ってないから、拓海さんの今日の晩ごはんは外食か、インスタント食品になるんだろうなぁ。ごめんなさい、拓海さん。
公園の水じゃ、何だか今の私には物足りなさを感じさせたから、近くにあった自動販売機に吸い寄せられるように近づく。
いつもなら、「自販機の飲み物は高いから」っていって、スーパーで買った飲み物か水道水とか、お茶作ったりコーヒー作ったりして飲んでるのに。
変だ。
こういうときって、いつもと違うものに魅力を感じたりするものなのだろうか。
…それにしても、こんなときでも喉は渇くんだなぁ…。
なんて、変なところに感心してしまう。
…きっと、そんなことでも考えていないと、嫌なことを考えてしまうから。
あぁ、今日は野宿かな…。ま、それもそれでいいけど。
そんな、前の私だったら「よくないでしょ!」と自分で突っ込んでそうなことも思う。