君と二人の201号室


でもほんと、どうしよう。

4月とはいえ、まだ夕方とか夜は寒いし。

おまけに薄着で出てきちゃったからなぁ…。



「あれ、菜帆ちゃん?」



不意に後ろから声をかけられる。

驚いて振り向くと、そこには瞳さんの姿が。



「どうしたの?こんなとこで。見たところ、この辺に買い物しに来たとかじゃなさそうだけど…。拓海とケンカでもした?」



久々に知ってる人の顔を見たからなのか、安心して涙が出てきた。

なんか私、瞳さんの前で泣いてばっかりな気がする。けどそんなこと、今はどうでもいい。



「瞳さ~ん…」

「…なんかあったんだね。とりあえず、うち来よっか。あ、拓海には私から連絡しておくから心配しないで」

「ありがとうございます…」







瞳さんに連れられてそのままやって来たのは、お正月以来の拓海さんの実家。



「お邪魔します…」

「あら、菜帆ちゃん!?菜帆ちゃん!いらっしゃい!」

「あ、お母さん。お久しぶりです」

「キャー!照れるなぁ、お母さんなんて。瞳もおかえり」

「ただいま。菜帆ちゃん保護してきた」



焦ったりすることもせず、普通の調子で話しかけてくれるお母さんに安心する。

…ほんと、この人が本当のお母さんだったらよかったのに。



「あ、克己くんもいるからね。みんなで集まろう」

「だって。…菜帆ちゃん、大丈夫?」

「はい、大分落ち着いてきました」



瞳さんがここに連れてきてくれたから、大分助かった。

…なんというか、正気に戻った感じがする。




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