君と二人の201号室
でもほんと、どうしよう。
4月とはいえ、まだ夕方とか夜は寒いし。
おまけに薄着で出てきちゃったからなぁ…。
「あれ、菜帆ちゃん?」
不意に後ろから声をかけられる。
驚いて振り向くと、そこには瞳さんの姿が。
「どうしたの?こんなとこで。見たところ、この辺に買い物しに来たとかじゃなさそうだけど…。拓海とケンカでもした?」
久々に知ってる人の顔を見たからなのか、安心して涙が出てきた。
なんか私、瞳さんの前で泣いてばっかりな気がする。けどそんなこと、今はどうでもいい。
「瞳さ~ん…」
「…なんかあったんだね。とりあえず、うち来よっか。あ、拓海には私から連絡しておくから心配しないで」
「ありがとうございます…」
*
瞳さんに連れられてそのままやって来たのは、お正月以来の拓海さんの実家。
「お邪魔します…」
「あら、菜帆ちゃん!?菜帆ちゃん!いらっしゃい!」
「あ、お母さん。お久しぶりです」
「キャー!照れるなぁ、お母さんなんて。瞳もおかえり」
「ただいま。菜帆ちゃん保護してきた」
焦ったりすることもせず、普通の調子で話しかけてくれるお母さんに安心する。
…ほんと、この人が本当のお母さんだったらよかったのに。
「あ、克己くんもいるからね。みんなで集まろう」
「だって。…菜帆ちゃん、大丈夫?」
「はい、大分落ち着いてきました」
瞳さんがここに連れてきてくれたから、大分助かった。
…なんというか、正気に戻った感じがする。