君と二人の201号室
*
柴田菜帆、15歳。
初めてのご対面に、只今感動しております。
「これが噂のベッド…!」
「そこ、感動するとこ?」
生まれて15年、初めてのベッドとのご対面。
話には聞いたことがあったし、写真や映像なら見たことあったけど、これが本物のベッド…!
今まで布団しか使ってこなかった私には、ここは感動してしまうところだ。
あぁ、何だか無性に飛び込みたくてうずうずする。
「拓海さん、飛び込んでもいいですか?」
「お好きにどーぞ」
「やった!」
拓海さんからの返事を聞いた直後、私は早速飛び込んだ。
ふかふかだ…。すごい…。
「ベッドに飛び込んだだけで、そこまで感動できるなんて…もはやすごい」
「拓海さん、私、明日死ぬんでしょうか……?」
「死なせないし、菜帆に死なれたら俺が寂しくて死ぬ」
「…」
私は恥ずかしくなって黙る。
サラッと真顔でそんなことを言われるこっちの身にもなってください…。今までこんなセリフ、恋愛小説でしか聞いたことなかったし、お世辞でも言われることなかったから、耐性0の私には刺激が強すぎます……。
「はい、部屋着あったよ。これでいい?」
「もちろんです。ありがとうございます!」
……部屋着、という概念が無かった。パジャマ…は、かろうじて知ってたけど、使ったことなかった。寝る時、家の中…いや、私服は中学の時のジャージ…に上着。小学校の頃はいつも、従兄弟のお下がりを着てた。
だから今、部屋着というものにも驚いている。そして、断る理由が見当たらない。
…そろそろ、ジャージもボロボロだしな……。高校のジャージは、むやみやたらに着ないことにしたし。だって、すぐボロボロになる…のと、洋服…買いたいし。
自分で使えるお金が出来たから、少しだけ…オシャレな服装をしてみたい。
だってもう、高校生だもん。…あんまり使うわけにはいかないけど。
…拓海さんと話していると、落ち着く。まるで昔から仲が良かったみたいだ。ただのコンビニバイトとお客さんの関係で、こんなに話すようになったのも今日が初めてのはずなのに。
なぜ、私はこんなに素直に甘えてしまうんだろう。前の私からじゃ想像もできない。私が誰かに甘えてしまうのも、こんなに甘えられる人ができるのも。