君と二人の201号室





――部屋に帰ると、そこはなんだか、恐ろしいほど静かで。

暗い部屋が、やけに広く感じられたのは、きっと私の不安の渦と重なったんだと思う。



――パチン



拓海さんが部屋の電気のスイッチを押した音が、そんな私の不安を打ち払うように、空っぽの部屋に響いた。

少しずつ電気がついていったように見えてしまったから、相当参ってるんだなぁ…と、何度目かの気持ちが湧き上がる。



「菜帆、一緒にお風呂入ろっか」

「…ふぇ!?」



ぼんやりと何かに浸っていると、拓海さんの口から爆弾が投下された。



「冗談だよ、冗談。でも、これで多分、完全にこっちの世界に戻ってきたでしょ?」

「あ、はい…」

「よかったよかった」



とても愛しげに私を見てくる眼を見て、「この人には敵わないな」なんて思ってしまった。わかりきっていたことだけど。

履いていた靴を脱いで家の中に上がると、あんなにザワザワしてた心が、ものすごく落ち着いていたから、やっぱり特別な場所なんだと実感する。



「菜帆、今日はごめん。肝心なとき、そばにいられなくて」



珍しく拓海さんがしおらしくなっている。

…謝ってもらっているのに、なんだかそれが面白く感じてしまうなんて、自分でもかなり失礼だと思うけど、それだけリラックスできているという証拠だ。



「…大丈夫です、仕方ないってわかってますし」



…しまった、これじゃあやっぱり、寂しかったみたいじゃないか。いや、実際寂しかったんだけど。

拓海さんに余計に気を遣わせてしまう。



「それに、来てくれたの嬉しかったです。だから、それだけで私は、拓海さんがヒーローに見えました」




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