君と二人の201号室
目の前には、真っ赤な顔の拓海さんがいた。
…珍しい。
なんだか今日は、色んな拓海さんが見られて嬉しいな。
「菜帆、俺を殺す気…?」
「え?」
「『ヒーロー』とか、自惚れるよ?俺。っていうか、もう自惚れてるかも」
ふぁ…!
なん…ってことを言ってたんだ私…!
自分の言ってしまったことをやっと自覚して、私の顔も赤く染まる。
真っ赤な顔で見つめ合う私たちは、きっとハタから見たらおかしな二人なんだろう。幸い…(?)周りに人なんて誰もいないけど。
「ダメだほんと、菜帆が可愛すぎて苦しい。ねぇ、キスしていい?」
「はぇ!?」
「うん、ごめん。返事待ってる余裕なんてないや」
切羽詰まったような顔があっという間に近づいてきて…
――そのまま、唇に熱を感じた。
しかも拓海さんは、どうやら一回では勘弁してくれないようで。
何回も何回も、角度を変えて。
…しかも、そのキスは徐々に長くなってゆく。
「…ふ、ゎ…た、くみさん…」
「黙って、菜帆。キスしづらい」
「ん…」
できる限りの抵抗をしてみても、全然敵うはずもなく。
そのまま、甘い甘いキスは続いていって、それにどんどん溺れている私がいた。
至近距離になったとき、拓海さんが吐いた息を私が吸って、私が吐いた息を拓海さんが吸ってること、それだけでも異常にドキドキしてたのに。
…それよりも、断然…ドキドキしてる。