君と二人の201号室
「…じゃあ、フラグじゃないなら、入ってきます」
「うん、そうしな。ご飯は?」
「食べてないです」
そういえば、お腹空いてきたな。
結局、拓海さんの実家では何も食べてないし。
「カップ麵のストックあるから、それでいい?」
「充分です」
お腹に入って、それなりにおいしいものなら何でもいい。
…拓海さんの料理は壊滅的だからやめてほしいけど。あれはマズい、本当に。
「じゃ、いってきまーす。あ、カップ麵は何でもいいです。辛すぎるとかじゃなければ」
「了解。いってらっしゃい」
ふふ、と笑う拓海さんに見送られ(そこまでの距離じゃないけど)、私はお風呂に向かった。
脱衣所で着替えながら…拓海さんの服(多分使用済み)を見つけてしまって、少しだけドキッとした。
…ちなみに、匂いを嗅ごうと思ったけど…なんだか変態みたいな気がして我慢したのは、墓場に持っていく覚悟だ。
そんなことを考えながら一人あたふたしているのも、段々バカらしくなってきたので、さっさと着替えて風呂に入った。
髪を洗いながら、やっぱりこんな未来、想像してなかったなぁ…なんて思う。
今では、ここのシャンプーの匂いに慣れているのが、なんだかくすぐったい。
なんか、本当に変だ。
…拓海さんと同じ匂いになって…常に拓海さんに抱きしめられてるという錯覚をしてしまう。それが錯覚ってこと、なんだか残念だ。
「…入浴剤とか…温泉みたい…」
…温泉入ったことないけどね。なんか前にも思ったな、こんなこと。
…あぁ、そうだ、拓海さんの実家のお風呂だ。瞳さんに半ば強引に入れられた(?)ときだ。
――なんて、ものすごくどうでもいいことを考えていたら、あっという間に終わってしまった。
あったまったなぁ…。
お風呂から出たら、風邪を引かないようにすぐに髪の毛を拭いて、水分を取る。
そして、湯冷めしないうちに着替えておかないと。
…おバカなのか何なのか、風邪引いたことないけど。予防は大事。