君と二人の201号室


そんなことを思ったのも束の間。



――チュ



優しいリップ音をたてて、キスされる。


真っ赤になってる私の前で、拓海さんは「してやったり」って顔してる。



「菜帆からしてくれないなら、俺からすればいいだけだもんね」



少しも悪びれる様子もなく(まぁ、悪びれることじゃないけど)拓海さんは笑うので、「なんかもういいかな」なんて思ってしまった。


…って、また油断してたら、またもや触れるだけのキスが降ってくる。

拓海さんのキスは、短いキスでも優しい気持ちになれるし、最近では少しだけ落ち着くようになったし(さっきはいきなりでびっくりしただけ)、それに…自惚れてるのは重々承知だけど、拓海さんの愛を感じて幸せな気持ちになれるから好きだ。


おはようのキスも…悪くはないけど。

…さすがにいつまでしてるんでしょうか…。



「…ダメだ、朝から止まらなくなりそう」



既に止まらなくなってるのには、全く気づいていない模様。


さらにこっちに近づいてくる拓海さんの胸板を押し返して(ごめん拓海さん)、私たちは一旦離れた。



「…ごめん、菜帆。やだった?」

「いえ、そうじゃなくて。その……時間、なくなっちゃいますよ?」

「いいじゃん、二人とも今日は休むって決めたんだし。あー融通利くとこでよかったー」



…そうはいってもですね?

今日は天気もいいから、布団干したいって思ったんですけど…。



「…って、拓海さん!二度寝はダメです!!」



もう一度布団に潜り込もうとする拓海さんを、慌てて止める。



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