君と二人の201号室
*
楽しかった拓海さんとのデートも終わってしまって、もう日が暮れようとしている。
…また行きたいな、デート。
拓海さんにそう伝えたら、なんて言ってくれるだろう。
「結局、めっちゃ楽しいデートだったね、ただ単に。今日、俺も仕事休んだし、菜帆も学校休んだのに」
「…でも、楽しかったからいいです」
思ってることを伝えてみる。
すると、拓海さんは驚いたような表情をする。
…そんなに意外だったんですか……?
なんて思ってると、拓海さんの表情はだんだんと柔らかくなっていって、優しく笑ってくれた。
「菜帆も楽しんでくれたならよかった」
「当たり前です。楽しくないわけないじゃないですか」
…拓海さんと一緒なら尚更。
それは、恥ずかしくて言えないけど。
「……あ、菜帆、」
「なんですか?」
「前」
拓海さんに言われて、まさかと思い、前を見ると。
――そこには、私たちの住んでいる部屋のドアの前に立っている、お母さんがいた。
「あ……な、菜帆…?」
やっぱり昨日みたいに、不安そうな声で聞いてくるお母さん。
「…菜帆、この人お母さんなの?」
「…はい」
コソッと尋ねてくる拓海さんに、私は小さく頷く。
一応、お母さんだ。…一応。