君と二人の201号室
「あの…ごめんなさい…。急に会いに来たりして…」
「……どちらさまですか」
私はやっとの思いで、その言葉を出した。
…違う。ちゃんと向き合うって決めたのに。
「…菜帆、ちゃんと話するって決めたんでしょ」
「はい…」
拓海さんにも、言われてしまう始末。
言われてから、もう一度気合いを入れ直す。
「…何の用ですか、〝お母さん〟」
「…!菜帆…!」
何かにはじかれたかのように、俯いていた顔を勢いよく上げたお母さん。
ひどく驚いたような表情をしている。
「…何の、用ですか」
「どうしても、菜帆と話がしたくて…」
「また、私を利用するつもりですか」
「菜帆、落ち着いて」
ついつい責めるような口調になってしまった私を、拓海さんがなだめてくれる。
我に返って、落ち着きを取り戻す。
「…そんなつもりは全くないわ。誓ってもいい。…ただ、菜帆と、一度でいいから、ちゃんと話がしたかっただけなの」
そう言い切る目に、噓偽りの兆しは見えないように思える。
「…ここは、どうやって突き止めたんですか」
「腕のいい探偵を雇って…。ごめんなさい、こんな犯罪めいたことして」
どうしてそこまで…。
…そもそも、あの〝叔母さん〟に聞けばよかったと思うけど。
会ってないとか、会えない理由があるとか…?
なんて、まさか…ね。