君と二人の201号室
*
あれから、ファミレスにやって来た。
窓際のテーブル席に、私と向かい合って座るお母さんと、私の隣に座る拓海さん。
…気まずい。
いや、気まずいも何もないんだろうけど。
むしろ、気まずいのはお母さんの方か。
「どこから話せばいいかしら…?」
「どこからでも構いません」
会えたのがどこか嬉しいくせに、怒ってるような気持ちもあり、複雑な感覚だから、つい、意地を張って敬語なんかを使ってしまう。
「……最初から話そうかしら」
「はい、どうぞ」
お母さんの意外と小さな口が開き、私は気を引き締めた。
「菜帆を置いていったのは……本当にごめんなさい」
「別に…。あのままでも嫌だったし。どうでもいいです」
「信じてもらえるかはわからないけど…。本当のこと話すわね」
「…そういう前置きとかいいんで。早く終わらせてもらえますか」
なんだかもう、嫌になってきてしまった。
私は今、かなり不安定なのだろう。
「鬱状態になっていて…。夏帆がお腹にできたときは嬉しかった。勝手に、菜帆も喜んでくれると思った。喜んで、何でも協力してくれると思った」
「そんなわけ…!」
「いいよ、拓海さん。…続けてください」
拓海さんが反論してくれたのは嬉しかったけど、この人にはっきりと文句を言っていいのは私だけだ。
…なんて、変なプライドみたいなものがある。