君と二人の201号室


「だから、なんでも押しつけてしまった。まだ、あんなにも小さな子供に」

「…」

「夏帆が死んだとき、目が覚めたの。私は今まで、何をやってたんだろう…って。でも、私は菜帆にあんなことを言ってしまった」

「「あんたが死ねばよかったのに」ですか?」



私の問いかけに、お母さんは静かに頷く。



「本当はわかってた。あんなの、菜帆のせいじゃないってことも、ちゃんとわかってた。だけど、夏帆が死んだショックと、菜帆にしてきたことの酷さに落ち込んで、自分の状態もコントロールできなかった。…親なのに、子供にあたってしまった」

「…そうですね」



私は、静かに相槌を打つ。


お母さんは、今にも泣き崩れそうだ。

ファミレスの店員さんが、時々、心配そうに私たちの横を通る。



「あのときの、菜帆の絶望したような顔を見て、私はこのまま、菜帆と一緒にいてはいけないと思った。もちろん、その…お父さんとも、一緒にいさせてはいけないと思った」

「なんで、お父さんも…?」

「私が言うのもなんだけど、あの人も菜帆に酷いことをしてたでしょ?無表情な菜帆を、殴ったり蹴ったり。私も…それなりにやってしまったけど、だんだん、あの人の方がヒートアップしていったでしょ?」

「…はい」



そうだった。

お母さんは時々私に暴力をふるったけど、でも、そんなに気力もないのか、ヒステリックに叫ぶことの方が多かった。

お父さんの方が、だんだん酷くなっていって…男の人の力で殴られたりするのは、相当痛かったなぁ…。



「だから、当時あまり働かなかった頭をフルに使って、お父さんと一緒に菜帆から離れた。妹に菜帆のことを頼んで。でも…しばらく経ったとき、失敗したと思った。あの子、結構自分勝手だから」

「…まぁ、否定できません」



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