君と二人の201号室
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菜帆へ
父…のようなものです。
まずは、ごめんなさい。わざわざ手紙なんか書いて。図々しいにも程があるよな。あんなことしたのに。
それと、ありがとう。こんなクソ親父の手紙なんか、見てくれて。本当は、燃やされても文句は言えないのに。
多分これは、俺の自己満足ですが、本当にごめんなさい。
俺は今、倒れて病院にいます。
医者から聞いた話によると、もっても5年、治療なんかをしたら10年はもつらしいです。まぁでも、それはできないと思うので、どのみち短い命ですけど。
きっと、今まで菜帆にしてしまったことの、罰なのでしょう。
いつ死んでもおかしくない今、俺が心に残ったのは、やっぱり菜帆のことです。
夏帆がお腹にできたとき、俺と母さんは嬉しかったんだ。
…これは、俺の希望的観測だけど、それ自体は多分、菜帆も嬉しかったんだと思う。
菜帆と母さんが二人っきりのとき、俺は仕事に行ってましたね。
そのときの俺は、噓臭く思われるかもしれしれませんが、「夏帆のことも幸せにして、菜帆と母さんも、今まで以上に幸せにしよう」…そう思い、仕事も今まで以上に頑張ってました。
ある程度お金が貯まったとき、俺はしてはいけないことをしてしまいました。起業です。
別にその人のせいにするわけではありませんが、友人に「二人目が生まれる」と話したところ、「起業して、子供たちを〝社長の子供〟にしてやったらどうだ」と言われました。
欲に目がくらんだのでしょう。俺は「家族のため」と言いながら、きっと結局は自分のために、起業しました。
夏帆が生まれ、夏帆が死んでしまいましたね。
俺も放心状態で、どんどん荒れていく母さんを止められなかった。