君と二人の201号室
*
「なにこれ…」
お父さんからの手紙を見て、また私は泣いてしまった。
本当に、なにこれ。
なんで敬語なの?
「通りすがりのオジサン」って、なに?
なんでもう死んじゃうみたいなの?
なんでこんなに
「会いたい…」
…なんて、思っちゃうの?私。
「菜帆、病院……✕✕市の○○病院で、106号室よ。…その……来たくなったら来ても大丈夫。でも……いつ退院するかわからないから…」
「お母さん、電話番号教えてください」
「え…」
驚いたように口を開けるお母さん。
「……お願いします、教えてください」
「え、えぇ…。もちろんいいわ。ただ、菜帆の方からそんなこと言ってくれるとは思わなくて……」
私だって、お父さんからの手紙がなかったら、そんなつもりなかった。
でも、あんなの読んだら、放っておけるわけない。
若干オドオドしているお母さんと電話番号を交換して、私はその番号を『お母さん』と登録する。
「…できた」
「菜帆、いいの?」
「はい、大丈夫です。拓海さん、心配してくれてありがとうございます」
私がそう言ってもなお、不安そうにしている拓海さんに、思わず笑みがこぼれる。
ほんと、過保護だなぁ……。
でも、嬉しいからいいや。
お父さん、拓海さんはちゃんと、私のこと大事にしてくれてると思うよ。