君と二人の201号室
「ドレスもいいけど着物も見たかったなー。あ、そーだ。式二回やればいいんだ」
「ダメです」
とんでもないことを言い出す拓海さんは、きっとツッコミ役がいないと生きていけないと思う。本当に。
「なーんーでー。可愛い可愛い菜帆を何回でも見たいんだよ?菜帆の晴れ姿見たいんだけど」
「充分じゃないですか…!」
むしろ、2着も着るなんて贅沢だと思う。お色直し…って言ってたけど。
「足りない。絶対足りない」
それで納得しないのが拓海さん。
「お金もかかります…!」
「俺の昔から貯めてたお年玉があるから大丈夫」
「そんなもの使わせるわけにはいきません…!自分のために使ってください…!」
私がそう言うと、ニッコリしだした拓海さん。
…怖い。
「なら問題ないね。可愛い菜帆を鑑賞したい、俺の買い物だもん。貯めててよかった」
「…拓海さん……!」
「ね?菜帆、お願い?俺のために着物も着てくれる?」
今回は……。
今回ばかりは…頷いてはいけない…。
「でも…」
「俺を癒して?」
「……っ、だ、ダメです」
「え~?」
頑張った、私頑張った……!
拓海さんからのお願いに首振ったなんて、頑張った……!