君と二人の201号室
「でも菜帆、お父さんとお母さんに見せなくていいの?…見たいと思うけどなぁ…、二人も」
「そんなの、わからないじゃないですか…」
二人のことを出され弱った私が呟くと、拓海さんはおもむろにスマホを取り出した。
しばらく何かを操作したかと思うと…。
「ほら、これ」
【せっかくなら、色んな菜帆が見たいな。拓海くん、説得お願いします!】
「な、なんですかこれ…」
「何って、菜帆のお父さんとお母さんからのメール」
平然と言う拓海さん。
…いや、そういうことじゃなくてですね…。
「いつの間に連絡取り合ってたんですか…」
「この前会ったとき、俺も交換しておいたんだ。連絡先」
どこまでもすごい人だ。抜け目ない。
「お父さんとお母さんも希望してるみたいだよ?」
「二人を引き合いに出すのはズルいです…」
なんにも考えてなさそうで、多分いっぱい考えてるから、拓海さんはすごく、ズルい。
それを表に出さないから、尚更。
「ズルくて結構。ほら、どーすんの?」
「うぅ…」
「まぁ?ここで「ダメ」なんて言ったら。二人とも悲しむだろうなぁ~」
「~!わかりました!着ます!着ますから!」
半ば投げやりになって私が答えると、
「そう来なくちゃ♡」
ニッコリ、満面の笑みを浮かべる拓海さん。
私はひとり、「あ、嵌められたな…」なんて思った。