君と二人の201号室
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私(一番の当事者)の知らないところで、恐ろしいほど話は進んでいたらしい。
久しぶりに結婚式のプランを見せてもらったら、「…式っていうよりパーティーじゃないのかな、コレ…」って思うほど、規模が拡大してた。八代家両親いわく、八代姉弟の仕業…らしいけど、実際のところはわからない。
「菜帆、明日、ドレスと着物の試着だって」
「…そうですか」
…なんかもう、色々すごすぎて実感が湧かない。
ただ、一つだけあるとするならば、「…あぁ、そういえばこの人たち、お金持ちだったんだっけ…」ということを思い出したことくらい。
「どした?結婚式、嫌?」
「あ、いえ…そうじゃなくて。なんか、微塵も実感湧かないなぁ…って思って」
「『微塵も』って」
拓海さんは、おかしくてたまらない…とでも言うように笑う。
…そんなに変なことを言ったつもりはないのだけれど。
「…まぁでも、準備全部俺たちがやっちゃってるからね。菜帆があんまり実感湧かないって言うのも、当然っちゃ当然かもしれないけど」
「…多分、一緒に準備してたとしても、大差ないと思いますけど…」
「そう?」
「…多分」
不思議そうに首をかしげる拓海さんが、私はなんだかおかしくて少し笑ってしまった。
本当にわからない…というような顔をしている。そこも、なんだか益々おかしく感じてしまう。
「…よかった」
「え?」
…えっと…なにが?