君と二人の201号室


「ぜ、善処します…」



今の私には、これが精一杯。


なのに。



「ヤダ。今呼んで。っていうか、「善処する」って言ったのに、早速敬語だったし」

「うっ…」

「なーほ」



痛いところを突かれた上、そんな甘えるような声で言われたら、もう私は頑張るしかない。



「…た、拓海…」

「…っ!」



顔を見たらやっぱり言えないと思ったから、目を閉じたまま拓海さ…の名前を呼んだ。

何秒か経って、少し恥ずかしさも冷めたから、恐る恐る目を開ける。

…さっきから拓海…何も言ってないけど大丈夫かな?



「菜帆、ヤバい…」



そこにいたのは、真っ赤な顔して口元に手をあてている拓海の姿が。



「え、どこが…?」

「うん、それもヤバい」

「…?」



何を言われても全くわからなかったので、私はただただ首をかしげるばかり。


…どうしよう、本当に何もわからない。ごめんね、拓海さ…拓海。


さっきから私は、心の中でも「拓海」と呼ぶのに全然慣れてない…。

もっと頑張らなきゃなぁ…。



「あーもー、その仕草も一々ヤバい。可愛い。俺、結婚して生きていけるかな…」

「えっと…何を言ってるかあんまりわかんないで…けど…。今までとあんまり変わらないんじゃないで…かな?」

「そーやって俺が頼んだことを頑張ろうとしてるのも可愛い。ひたすら可愛い」

「いや、ええっと…?」




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