君と二人の201号室
「…っ、菜帆…不意打ちヤバい」
「え?」
「よくそんなこと、サラリと言えるね」
「別に、サラリとは言えないですよ?それなりに緊張しました」
「でも…ありがとう」
優しく笑う拓海さんを見て、「これからはこの笑顔が、私のいちばん近くで見られるんだなぁ」って思うと、なんだかむず痒くなるくらい、嬉しくなった。
…私がこの笑顔を守りたい、守るんだ…って、ひっそりと心の中で誓った。
あんまり気が進まなかった結婚式だけど、なんだか一気に楽しみになってきたなぁ…。とりあえず、緊張して失神しないようにしなくちゃ。
――プルルルル
「あ、電話だ」
鳴ったのは拓海さんの携帯。
…なぜだろう、毎回毎回タイミングよく電話鳴ってるように感じるのは私だけかな?
「あ、なんだ姉貴か…」
「瞳さん…」
…相変わらず、瞳さん相手だと眉間に皺が寄ってる拓海さん。
…そんなに嫌なのかな。一緒にいるときは、そこまで苦手意識持ってるようには見えなかったけど。
「いいとこだったのに…」
あのまま電話が鳴らなかったら、何をされてたんだろう。
「なに?」
少し不機嫌な声色の拓海さん。
でも、それは最初だけだった。
「え、あぁ、うん…。……うん。わかった。はい、ありがと」
話しているうちに、だんだんと拓海さんの表情が柔らかくなっていった。
…なんだったんだろう。
「菜帆、式の日取りとか決まったって――」