君と二人の201号室
「拓海さん、お湯を沸かしていいですか?」
「もちろん。あ、菜帆、ちょっと多めに沸かしといて。俺も、インスタントコーヒー淹れるから」
「了解です!コーヒーも好きなんですか?」
「かなり」
おぉ、薄々気づいてたけどやっぱり……!
…『料理できない』って言ってたけど、インスタントコーヒーは淹れられるんだね。そりゃそっか。カップラーメン作れるんだし。
なんて、そんなことを思いながら、私はやかんを探す。
…お、見つけた。
…なんか、可愛いな。
見つけたのは、緑色で、形は丸に近い感じのやかんだった。…いや、丸というか…何かに似てる……。
緑色で、丸っぽくて、薄い茶色の取手……。
あ、カボチャだ。カボチャに似てる。
可愛いなぁ…。
でも、何でそんなものが一人暮らしの18歳男性の部屋に?
…元カノさん、とかのものかなぁ……。
…なんだろう、モヤッとする。
…きっと気のせい気のせい。
早くお湯沸かそ。
「菜帆~、やかんあった~?」
「はい、ありました~!可愛いですね~、これ」
そう言って、見つけたやかんを拓海さんに見せる。
すると、拓海さんは露骨に顔をしかめた、珍しい。
「それ、姉貴がふざけて置いてったやつだ…」
「拓海さんって、お姉さんいたんですか?私てっきり元カノさんのものだと思ってましたけど…」
…自分で言ってて、さっきから落ち込んでる気がする……。
拓海さんはかっこいいし、年上だし、そういう人がいても当然なのに…。
…ヤキモチ、というものなのかな…。
でも、これは「好き」ってことにはならないだろうし…。
前に図書館で読んだ青春友情小説に、同性の友達の間とかの間でも起こるって書いてあったし…。
それに、お母さんが弟とか妹ばっかりに構ってたら、そういう気持ちになるし…。
まだ、この気持ちの正体はわからない。