君と二人の201号室





「拓海さん、お待たせしました。見てください!この自転車、もらっちゃいました!」



拓海さんのところに着いた私は、開口一番にそう言った。



「お、よかったね。これで、いっぱい一緒に出掛けたりできるね。自転車デートとか」

「…相変わらず、人をからかうのが好きなんですね」



ニヤニヤしている拓海さんに、私は少し冷ややかに言った。ちょっとした対抗心からだったけど。



「人を…っていうか、菜帆をからかって、その後の菜帆の反応を見るのが好きなだけだよ。いや、どんな菜帆も好きだけど。っていうか、今のも本心だし。デートしたいな、俺は」



私のささやかな反撃は、何倍かにされて返された。

当の本人、拓海さんは、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべている。

…こんな姿も様になるのだから、イケメンさんは本当にズルいと思う。



「拓海さん、スーパー行きましょう。食材を買いに。私、ちゃんとエコバック持ってるので」



一々反応していると、拓海さんの思う壺だと思ったので、この際スルーしておこう。



「菜帆、抜かりないね」

「節約のためです。ビニール袋って、お金かかる時もあるので」

「気にしなくていいのに」



そうか、生活費は拓海さん持ちなんだっけ。

でも、もう長いこと使ってたから、節約術どころか、もはや癖なんだよなぁ。まぁいいや、正直に言おう。



「すみません、癖で……」

「まぁ、あっても困らないし、いっか」



割かし柔軟な(だと思う)拓海さんは、すんなりOKしてくれた。

…心配する必要なかったね。



「じゃあ菜帆、本当にそろそろ行こう。俺に着いて来て」

「わかりました。引き離されないように頑張ります!」



乗ったことがあるとはいえ、しばらくぶりだから、やはりブランクはある。

だから、かなりの気合を入れて、拓海さんに着いて行く決心をしたのだった。



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